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引渡命令と強制執行 ―もくじ―
不動産引渡命令とは
引渡命令の対象
引渡命令の手続
引渡命令から強制執行申立までの流れ
不動産引渡命令の申立て方法
引渡命令の申立書の記載例
執行文付与・送達証明申請の方法
強制執行をする場合の必要書類等


―不動産引渡命令とは―
―不動産引渡命令とは―

不動産を競売で買い受けた人(買受人)に対し,簡易,迅速に不動産の占有を確保してもらうため,代金を納付した買受人の申立てにより,執行裁判所が,債務者,所有者及び一定の要件のある占有者に対し,競売不動産を買受人に引き渡すべきことを命ずる裁判のことをいいます。

簡易,迅速とは,訴訟を提起して判決を得ることと比較した場合であり,多少の手間と占有確保までの多少の時間はかかります。また,引渡命令の執行には相応の費用もかかります。

―引渡命令の対象―
―引渡命令の対象―

(1)
原則として,次に掲げる者は引渡命令の対象となります。ただし主な例外として(2)に掲げる場合があります。

ア)債務者・所有者

イ)物件明細書の「A買受人が負担することとなる他人の権利」欄に記載されていない占有者(多<は,「B物件の占有状況等に関する特記事項」欄に記載があります。)


(2)
「B物件の占有状況等に関する特記事項」欄に記載してある占有者であっても,以下に該当する場合は引渡命令が発令されない可能性があります。

ア)買受人が共有持分を取得した場合(複数所有者の各共有持分を取得し,合計すれば完全な所有権を取得した場合は含みません。)で,他の共有者が占有している場合,又は共有者の一部から使用を許されている者が占有している場合

イ)実行抵当権以外の抵当権(競売申立てをしていない抵当権)の債務者(所有者を除く。)が,最先の賃借権に基づいて占有している場合

ウ)特権を有する者(外国の外交官など)が占有している場合

エ)引渡命令に関する平成8年の民事執行法改正前の旧法が適用される事件における占有者で,差押えの前から所有者との関係で適法な権原に基づき占有しているものと認められる場合(例えば期限切れの短期賃借権者や使用借権者)

対象となるのは,平成8年8月31日以前に競売が申し立てられた事件(事件番号の年度が平成7年以前のものと平成8年のものの一部)です。


(3)
原則として,次に掲げる者は引渡命令の対象となりません。物件明細書の「3買受人が負担することとなる他人の権利」欄に記載のある占有者。ただし,買受人が代金を納付した後,引渡命令の申立てができる期間内に期限が到来した短期賃借権者については,期限到来後,引渡命令の対象となります。

また,同欄に「賃借権(不明)」と記載のある場合で,引渡命令の審理で占有者が賃借権の存在を証明できなかったときは、その占有者も引渡命令の対象となります。


(4)
代金納付日から6か月間の明渡猶期間が認められる占有者については,同期間経道後でなければ引渡命令に基づく強制執行をすることはできません。

ただし,買受入が買受後に,建物使用者に対し買い受けた建物の使用をしたことの対価の1か月分以上の支払を相当の期間を定めて催告し,その相当の期間内に支払がなかった場合には,6か月の期間経過的でも強制執行をすることができます。


(5)
土地に対する引渡命令を得て,売却対象外の地上建物を収去(取壊し)することはできません。その場合は建物収去土地明渡訴訟を提起して判決等を得る必要があります。


(6)
物件明細書作成後に現れた資料等により執行裁判所の判断が変わる場合もあり得ます。また,抗告審において執行裁判所と異なる判断がなされることもあり得ます。

―引渡命令の手続―
―引渡命令の手続―
 
(1)引渡命令の申立て 

ア)
申立てができるのは,代金納付の日から6か月{代金納付時に明渡しの猶予(「物件明細書の詳細説明C−18の項を参照)を受ける占有者がいた建物の買受人については9か月}以内に限られますので注意してください。

もちろん代金納付前は申立てができません。

なお,「物件明細書の詳細説明」B−19の項の記載がある場合,申立てができる期間が9か月になるとは限りませんので注意してください。明渡猶予制度の適用があるか否かは,審尋等を経て引渡命令発令時に判断されるからです。

イ)
申立費用として,相手方1名につき500円の収入印紙と決定正本の送達料が必要です。

ウ)
申立ては,申立書を作成し,提出する方法によります。申立書の書き方,添付書類,納付すべき送達料については,執行裁判所の引渡命令担当窓ロヘお尋ねください。

エ)
相手方が法人であり,その代表者若しくは管理人が欠けているか,又は代表権を行うことができない場合などには,原則として特別代理人の選任が必要です。

同手続には,申立費用500円のほか,別途費用の予納が必要ですので,詳しい内容については,執行裁判所の引渡命令担当窓ロヘお尋ねください。

オ)
破産管財人が選任されており,破産財団から不動産が放棄されていない場合は,その管財人を相手方としてください。


(2)引渡命令の発令,送達

引渡命令が発令されると,当事者に送達されます。


(3)執行抗告期間

当事者に引渡命令が送達された日から1週間は,執行抗告(高等裁判所に対する上訴)を申し立てることができます。

申立人も引渡命令申立却下の裁判に対して執行抗告を申し立てることができます(抗告状は地方裁判所に提出します。)。執行抗告の申立てがなくこの1週間を経過すると,引渡命令が確定します。


(4)執行文付与申立て・送達証明申請

引渡命令が確定したら、執行の準備として,執行文付与申立てと送達証明の申請をし,執行文と送達証明書を取得します(執行文は引渡命令正本と一体にしますので,申請時に引渡命令正本を提出してください。)。

なお,これらには手数料(執行文1通につき300円,送達証明書は相手方の数×1 5 0円の各収入印紙)がかかります。


(5) 執行官に対する執行申立て

ア)
引渡命令正本(執行文付き)と送達証明書を添付の上,引渡命令執行の申立てをします(当事者が法人の場合は代表者事項証明書も必要です。)。

イ)
所定の予納金が必要です。

ウ)
申立てを受けた執行官は,予定を立てて執行に着手します。当初,執行官は,相手方に原則として1か月以内の期限を決めて明け渡すよう催告することができ,この場合,民事執行法1 6 8粂の2第3項に定める事項が当該不動産所在地に公示されます。

それでも明渡しに応じなければ,運送業者を手配するなどして本格的な明渡しの執行を行いますが,その場合は相応の費用がかかります。

エ)
申立てに関する詳細は,執行宮室にお尋ねください。


(6) 明渡し完了

上記の手続きが進み、強制執行が完了すると引き渡しが完了します。
所有権は代金納付を済ませれば移りますが、引き渡しが完了して、初めて不動産を使用することができます。

―引渡命令から強制執行申立までの流れ―
―引渡命令から強制執行申立までの流れ―

@ 引渡命令申立

(申立ができるのは,代金納付手続きを完了した日から6ケ月以内)

A 審尋手続き
 
引渡命令の影響の重大性にかんがみ,相手方に権利主張の機会を保障する趣旨から,代金納付前の所有者以外の者が相手方の場合には審尋手続きを行う必要があります。通常は7日以内に回答するよう,盲導書を相手方に送達しています。

※民事執行法改正後(平成8年9月1日以降に競売中立がなされた事件)の場合は,代金納付前の所有者以外の者が相手方の場合であっても盲尋手続きを行わないことがあります。

B 引渡命令の発令
 
裁判官が事件記録,審導の回答書等を精査し,発令できると判断したときは,引渡命令が発令されます。

C 引渡命令正本の送達
 
申立人,相手方双方に引渡命令正本が送達されます。同命令正本を受け取ってから10日後に相手方への送達状況を管轄裁判所にて電話で確認してください。

相手方が不在,転居先不明等で引渡命令正本が送達されなかった場合には,担当書記官から連絡がありますので,指示に従って下さい。

D 執行抗告
 
相手方は,引渡命令正本が送達された日の翌日から1週間以内であれば,執行抗告という不服申立ができます。

執行抗告が提起された場合は,引渡命令が確定しないことになりますので,その抗告事件の判断がなされるまでその後の強制執行手続きはできないことになります。

E 執行文付与
 
引渡命令が執行抗告されることなく又は執行抗告が,却下,棄却され確定した場合,執行文付与の申立を行い,引渡命令の末尾に執行文を添付してもらいます。

F 送達証明
 
引渡命令正本が相手方に送達されたことの証明です。

@からFの手続きを行った上で,管轄地方裁判所の執行官室に強制執行の申立をすることになります。

※必要書類など詳細については,管轄地裁判所の執行宮室でご確認して下さい。

―不動産引渡命令の申立て方法―
―不動産引渡命令の申立て方法―

1、申立の時期

代金納付手続きが完了すれば,直ちに申立てをすることができます。ただし,代金納付手続きを完了した日から6ケ月を経過したときは,引渡命令申立てはできなくなり,明渡訴訟を提起することになります。

2 申立手数料

相手方の数×収入印紙500円(収入印紙は消印しないでください)

3 予納郵便切手

5800円(内訳 500円×10枚,50円×10枚,20円×10枚,10円×10組)

※相手方が1名増えるごとに1050円×2組ずつ加えてください。

4 申立書

申立書正本,申立書副本×相手方の数

※申立書は,記載例を参考にして,A4版用紙で作成されるようお願いします。

5 資格証明または商業登記簿謄本

申立人・相手方が法人の場合は,それぞれの資格証明書または商業登記簿謄本が必要です。

6 調査報告書
  
差押後の占有吉等で執行官作成の現況調査報告書の内容と異なる場合は,申立人において現在の占有状況(占有の時期,権限内容等)について調査報告言を作成し提出してください。

7 
記載例(参考)

※相手方が複数で,それぞれ引渡しの対象が異なり,申立の趣旨で引渡の対象を特定する場合
 
@相手方Aは申立人に対し別紙物件目録2記載の不動産のうち○階○○号室を引き渡せ。
 
A相手方Bは申立入に対し別紙物件目録2記載の不動産のうち○階○○号室を引き渡せ。

※一個の建物の一部が対象となる場合で,0階○○号室等では場所の特定ができない場合相手方は申立人に対し別紙物件目録記載の不動産のうち,別紙図面の朱線で回んだ部分を引き渡せ。
(別途,図面を相手方数十1枚提出してください)

―引渡命令の申立書の記載例―
―引渡命令の申立書の記載例―

引渡命令の申立書の記載例です。


下記書類が、引渡命令を確定するための、当事者目録です。
誰が誰に対して引渡命令を発令するのかを特定するための書類です。


上記の申立書と一緒に物件を特定するため物件目録を添付します。
通常は、裁判所の資料(ファイル)の三点セットに記載されている物件目録をそのまま使用できます。


以上の手続きが完了しますと、引渡命令が確定します。
その証拠して、下記の不動産引渡命令の正本が送られてきます。

―執行文付与・送達証明申請の方法―
―不動産引渡命令の執行文付与・送達証明申請の方法―

執行文付与とは、

引渡命令が確定したときの送られてくる、不動産引渡命令の正本の末尾に添付する書類のことです。引渡命令の正本の一部と考えていいと思います。

不動産引渡命令書が届いただけでは、引渡命令は確定しませんので、執行文付与と送達証明書の手続きが必要になります。

引渡命令が確定しないと、手続きができませんので、下記の要領に沿って申請をして下さい。


送達証明書とは、

引渡命令の正本が相手方に到達したことを証明するための手続きです。
引渡命令の正本だけでは、なんの効力もなく、相手方にきちんと命令が送達したことを証明して効力が発揮されます。


1、申請の時期

執行文を付与できるのは,引渡命令が確定(相手方が引渡命令正本を受け取った日の翌日から1週間後)してからなので,裁判所から申立人に引渡命令決定正本を送達して10日ほど後に,確定したかどうかを代金納付係の担当書記官にお尋ねください。


2、必要書類

(1)執行文付与申請書
申立手数料1件につき,収入印紙300円を貼付してください。

(2)買受人に送付済みの引渡命令正本
この正本の末尾に強制執行をすることができる旨付記します。

(3)引渡命令正本送達証明申請書
相手方1名につき,収入印紙1 5 0円を貼付してください。

※申請書は裁判所に備え付けられていますので,引渡命令申立書に押印した印鑑を持参してください。


※収入印紙には割り印をしないでください。消印は裁判所がします。


                    執行文付与の申請書の記載例


                   送達証明の申請書の記載例です。

―強制執行をする場合の必要書類等―
―引渡命令に基づく明渡しの強制執行をする場合の必要書類等―

(1)現況調査報告書の写し

執行官に明渡執行の申立をする際に,執行官から現況調査報告書の写しの提出を求められることがあるので,この写しをお持ちでないときは,担当部署で謄写申請をしてください。


(2)資格証明または商業登記簿謄本

申立人・相手方が法人の場合は,それぞれの資格証明書または商業登記簿謄本が必要です。

(3)執行予納金
   
6 0,000円(場所が1か所増すごとに2 5,000円)

※詳しくは管轄地方裁判所の執行官室にお問い合わせください。


以上で引渡〜強制執行までの手続きの流れは終了です。

裁判所の執行官の指示通りに手続きをすれば、誰でもできる簡単な手続きです。


                私に実際に送られてきた執行文の写しです。


             実際に私に送られてきた、送達証明書の写しです。

私の場合は、引渡命令と執行文付与、送達証明書まで、手続きを終了しいつでも強制執行できる準備をしましたが、結局は所有者を探しだし、話し合いで解決できましたので、強制執行の手続きをすることはありませんでした。
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